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山本 倫儀(ヤマモト ノリヨシ)
の転職コラム

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2010年3月の転職コラム

山本A男は28歳。小さな食品商社の営業マンである 。
大学在学中から公務員試験合格を目指し勉強していたが、4年生の夏には合格できず、
秋口から就職活動を少ししたが、希望しているような有名企業はほとんど
採用を終了していたこともあり、なんとなく卒業の日を迎えてしまった。 

何もしていないと不安になるのと、親もうるさく言ってくるので、語学留学をかねて
カナダにワーキングホリデーに行った経験を持っている。

日本に戻ってきたA男は、大学時代の友人が大手企業で毎日忙しくても一生懸命に
仕事をしている姿を見て焦りを感じ、転職サイトで見つけた食品商社に入社した。
正直、活動中に最初に内定が出た会社で、これで活動が終えられるということで決めた会社だった。
食品商社といっても、40名規模のいわゆる卸問屋で、ときにはスーパーの特売日などは応援に
かけつけることも重要な仕事だったりした。

仕事にも慣れた3年目から、同じスーパーに出入りしているメーカーや同じ食品商社から
冗談半分で「うちに来て働かないか」といわれることが多くなった。
元来持っている明るいキャラクターに加え、約束したことはきちんと守るという
営業手法が周囲からも好評で、売上実績も伸びてきて少々自信もついた頃だった。

ある日、大手食品メーカーの子会社の営業主任と名乗る人から、会社に電話があり
まずは話を聞くだけという予定で会うことになった。
その主任はA男と30分話すと、一緒に働こうと非常に前向きに話してくれ、
今度、社長面接の機会を設けると言ってくれた。
A男は「話だけなら…」と 考え、でも悪い気はせず社長面接に行った。

思いがけないかたちで進んだ話とはいえ、社長面接である。
A男はホームページでその会社のことをある程度調べて社長面接に臨んだ。
社長面接は、A男が質問を受けるというよりも、社長が考えているビジョンについて聞くことに
多くの時間が割かれた。A男も実際に頷ける内容だったので、精一杯共感していることを
アピールした。
面接の終わりには、
『信頼している営業主任からの推薦なので 前向きに考えている。でも、
入社してからのズレがあっては困るので 顔合わせの意味もかねて、営業部長クラスと
食事をしながらもで今度会って欲しい』と言われ、社長面接を終えた。

この頃になると、A男は小さな食品商社から大手の系列企業に入り
バリバリ働く自分を想像し、気持ちは完全に転職へと傾いていた。

「俺ってデキル営業マンだな。分かる人には分かるんだな~」

営業部長から直接携帯電話に電話があり、ランチの日時を設定した。
少しの緊張感を持ちながらも、自分の「勝負スーツとネクタイ」でそのランチの
席についたA男だったが、やわらかな物腰の部長から発せられたいくつかの
質問で、完全に頭が真っ白になっていた。

「顧客のABC管理ってどういう基準でやってるの?訪問頻度はどれくらい?」
「月の売上平均はどれくらいで、会社全体の比率で考えると、どれくらいやっているんですか?」
「新規であたる数って、月にどれくらいで、どんな企業ですか?」

A男は一応答えているものの、部長たちの表情が明らかに求めている答えではないと
判断していることにすぐ気がついた。
何を食べ、どんな味だったかも忘れ、部長2人の丁寧な挨拶と『食事代はこちらが
持ちます』という言葉だけ微かに記憶にとどめながら、電車には乗らずただ歩き始めた。

「ヤバイ・・・」

(つづく ※以上はすべてフィクションです)